おいらには「ひいばあちゃん」がいた。
もう記憶もおぼろげとなってしまったけど、なんかふと思い出した。別に理由は無い。
…
まだおいらが小学生低学年の頃、ひいばあちゃん(母親の母親の母親)が元気にしてた。
練馬に1人で住んでいて、腰は曲がって足もむくんで、総入れ歯だったけど、元気にしていた。
たまにばあちゃんに連れられ、遊びに行ったりしてた。
時には母親やばあちゃんとケンカをし、家を追い出された形で
ひいばあちゃんのところに泊まったりもしてた。
年寄りだから掃除が行き届かず、便所とかは結構汚かったのを覚えている。
風呂場もあったんだけど、もっぱら近くの銭湯まで出かけたな。
まあガキだったから一緒に女湯に入った。
ひいばあちゃんの、伸びきったシワシワのおっぱい(と言えばいいのだろうか?)も
おぼろげながら覚えている。
風呂上りには、銭湯を出たところの自動販売機でジュースを買ってもらった。
当たり付きのヤツで、なんだか高確率で当たっていた覚えがある。
今はもう無いんだろうな、あの銭湯。場所がどこだったかすら覚えていないし。
やがてひいばあちゃんは入院した。寝たきりとなった。
理由はわからない。当時幼かったおいらは、理由がなんなのか考えることすらなかった。
ただ、母親とばあちゃんが「ボケてきている」と口にしていたのはわかった。
久々にひいばあちゃんに会った時は、正直驚いた。
髪は短く切られボサボサ。視線も定まっていないような感じ。
何か言っていたが、何を言っているのかもわからない。めっきり痩せている。
すでに自分の子供であるばあちゃんのことすら、ちゃんと理解できていなかったかもしれない。
—
ひいばあちゃんとの断片的な想い出は結構ある。
釣堀でおいらが竿を振り回し、針がひいばあちゃんのアゴのあたりに刺さったことがあった。
川べりだったか、結構急な斜面にみんなでフキだかを採りに行くことになり、
夢中になっているばあちゃんと母親をよそに、
おいらはずっとひいばあちゃんの手を引いていたな。子供ながらに、転んだら大変だと。
あとから母親に「あんた優しいねえ」とかちゃかして言われたとき、
「なに言ってるんだ! 転んだら大変じゃねえか!」とマジ切れした。
いつだかひいばあちゃんの家のゴキブリホイホイを開けたら、ビッシリと捕まってて
それを見せたら「あらぁ、きれいな虫だねぇ。」とか言われた。
—
それらの想い出が吹き飛ぶような姿の、ベッドで寝たきりになっているひいばあちゃん。
半ばおそるおそる近づいた。そうしたら、もっと驚いた。
「なおちゃん、なおちゃん、なおちゃん…」と、おいらの名前を呼んだ。
それがおいらの中の、ひいばあちゃんの最後の記憶。
今思えば、もっといろいろしてやりたかった。
肩たたきをもっとたくさんしてやればよかった。
学校での話しとか、たくさん聞かせてやればよかった。
そういや、夜になると足がむくんでいたな。病院連れて行ってやればよかった。
銭湯で背中流してくれたのに、ありがとうも言ってなかったな。
後悔だらけ。
おまけに、どんどん忘れていくんだよね。顔も、声も、においも。
写真を見れば顔を思い出すけど、記憶の中に動いているひいばあちゃんはもういない。
忘れたくないんだよね。忘れていくのが嫌なんだよね。
今は結婚して、いっちょ前に子供までいる姿を見せてやりたいんだよね。
いつかばあちゃんがいなくなる日が来るだろうし、母親もその日が来るだろう。。
まあ、順番なんかわからないから、先においらかもしれないけど。
とにかく、忘れていくの嫌なんだよね。
ばあちゃんの雑煮の味や、母親のうるさい声や、とにかく全部忘れたくないんだよね。
でもいつの日か、同じ味を口にすることができなくなり、
同じ声を耳にすることができなくなる日が来るんだよね。
写真やビデオなら撮ったりしてるけど、そういうんじゃないんだ。
その日から記憶が薄れていくだけになって、やがて消えちゃうのが嫌なんだよね。。
こんな事を心配し、なのにやがて絶対に訪れるなら、なんのために生きているんだろう。
なんでいい年して、こんなことを考えているんだろう。
よくわからない

コメント
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私はなんの為に生きているのかわからない。
いつも「何のために?」って考えるのが不安で落ち着かない。
忘れるどころか
多分「忘れる前の覚えていること」も少ない。
今考えたんだけど
多分人間よりもっと上の階層の為にだんだん廻っていくのかなあ。
何言ってんだか。朝っぱらから。
否、やっぱり私は忘れてしまうコンテンツのようなものすら
少ないのに(まあ、量の問題では無いだろうけれど)
ほんとうに何のために???ってわからない。
いつもそう思っていた。(いる)
で。
その「何のために?」って理由のカケラをつくるために
落ち着き無くジタバタしている
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何のためなんだろうね。
種の繁栄? そんなのどうでもいい。
やりたいことをやるため? 現実的に何ができるって言うんだ。
たぶん今は疲れているだけで、2~3日するかしないかで元気になるとは思う。
いつものことだしね。
だけど、いつおかしくなってしまうかと考えると、それが怖い。いや、大丈夫なんだろうけど。